2017年06月11日

「15の悪魔」と初恋の価値/制作顛末


 カクヨムで何か投稿してもアクセスが伸びないどころか読者ゼロ人状態で正直しんどいのだが、短編でコンテストやってるらしいから話のタネに一作書いた。

「『15の悪魔』と初恋の価値」https://kakuyomu.jp/works/1177354054883366964

 せっかく書いたのに誰にも読まれなくて小説も俺もかわいそうなので、せめて工程でも振り返ろうかと思う。工程というか、自分が書きながら半分無意識で考えていたことを言語化していく。

 ファミ通コラボの応募要項は以下の通り。

”明日起こるかもしれない、あなたの「if」の物語
『僕とキミの15センチ』
19周年を迎えるファミ通文庫がカクヨムと組んでコンテストを開催します!  “15センチ”と “男女”の二つのお題が入っていれば、どんな物語でもOK。1万文字〜1万5千字のショートストーリーを大募集! ファミ通文庫の作家さんたちと一緒に、みなさんもぜひこの記念企画に参加してみませんか?
大賞受賞作品は、ファミ通文庫作家陣とともに書籍化! 魅力あるストーリーをお待ちしています。”

 文面を意訳すると、「15センチ」と「男女」をいい感じに使って恋愛小説書いてね。字数は一万ちょっと。明日起こるかもしれないあなたの「if」って意味分かるよね。「僕とキミの距離があと15センチ近かったら〜」的な切ない恋愛小説って意味だよ。応募数稼ぎたいからどんな物語でもOKって書いてるだけで切ない恋愛小説しか編集部でピックアップしないからね」
 ――という感じだろう。夜中にツタヤで借りた秒速5センチメートル見ながら考えたような企画である。

工程1:要素分解

 なんであれお題をひねって短編小説書くのは大好きなので、とりあえず「15センチ」の方から考えてみることにする。「男女」なんて適当に恋愛っぽい要素だしとけばなんとでもなるので実質どうでもよい。
 15、15とただ考えていても仕方ないのでググってみる。適当にwikiなど漁ってみたところ、一番おもしろそうなネタとして
 「縦、横、斜めの和がそれぞれ15になる3×3の魔方陣」を見つけた。うん、いけそう。(←安直。今思うとネタかぶりが怖いから題材にするのはやめておいた方がよかったかもね)
 ともかく魔方陣を出すことにする。こういうやつ。こないだやった「9時間9人9枚の扉」にも出てきたなぁ。

 8 1 6
 3 5 7
 4 9 2
 ――さてどう使おうか。と悩んでいったんペンディング。

 さて、単位も含めて「15センチ」と考えると、この中途半端な長さが意外と難しい。ぱっと思いつくのは「身長差」ぐらいなものだろうか。ファミ通が「5センチだと秒速そのままだから」って3倍にしたせいでややこしいことになっている。
 まあ身長でいいや。ここは被るだろうけどあえて被せる。「身長差」を使った小説の中で俺のが一番おもしろければそれでよくね? 余裕っしょ。考えるのめんどくさいし。

 「15の魔方陣」と「身長差」と「男女」――これで組み合わせる要素は三つになった。
 
工程2:要素結合
 
 単純に文章にしてしまおう。
「15の魔方陣で身長差をあれこれする男女」。
 身長差なんてものは縮めるか伸ばすかしかない。なるほどこの魔方陣は「身長を伸ばしたり縮めたりするための魔方陣」だったのだ。
 どうやった伸ばしたり縮めたりするのだろうと魔方陣とにらめっこしていると、どうやらこの魔方陣は中央の5を中心に絶対値1〜4の数字の組み合わせ(4と6、3と7、2と8、1と9)で出来ているようだと気が付く。なるほど、〇:●、二つの要素の組み合わせ――ああ、そうか。ここに「男女」が入るのか。この魔方陣は「男女の身長を伸ばしたり縮めたりするための魔方陣」だったのだ。ほーん、なるほどね。謎は全て解けたわ。

 さて、数字の組み合わせの高い方を男にすれば男の身長が伸びるし女にすれば女の身長が伸びる。どっちを伸ばそう。ていうか男の身長を伸ばしたいときってどんなときだ? 身長差が有利に繋がる何かをやるときか。となるとスポーツ全般か。極端なのだとバレーとかバスケとか? 

 ”バスケ部に伝わる謎の儀式、女バスの身長を生贄にして男バスの身長を伸ばす黒魔術を阻止しようとする主人公。ところが実は女バスの試合前には男バスの身長を生贄にして女バスの身長も伸ばしていたのでなんかwinwinっぽいのでもうほっときますね。(←今書きながら思いついた別案)。”

 スポーツ以外だと、昔の戦争なんかで使えそうな魔方陣やな。重装歩兵が肉弾戦頑張ってた頃にこの魔方陣があったらさぞかし流行ったに違いない。――あったってことにしようか。
 さて重装歩兵といえばギリシャローマ。ギリシャローマで肉弾戦強いとなるとやっぱスパルタかマケドニア辺りか。スパルタの方がキャラ立ってて使いやすそう。――なるほどな。この魔方陣は「スパルタ由来の魔方陣」やったんか。戦争前に男の身長をかさ上げして槍投げなんかで優位を取ったわけやね。

 じゃあもうしょうがないから主人公は「スパルタの魔方陣が使えるくらいスキルの高い魔法少年か少女」にしよう。――女の身長が縮む魔方陣やから、魔法少年の方にして、身長縮んだ被害者を少女にしようか。
 被害者……といっても、この魔方陣、参加者9人の合意がないとできないよな。1万5千字までのコンテストでまともに9人出すのはきつい。魔方陣の思い付きはおもしろいから引き返さないとして、まっすぐ使うわけにはいかないかな。

工程3:結合したものをベースに書き始める

 さて書き始めて、序盤は順調。「15の悪魔」を「スパルタに由来する身長と引き換えに契約する悪魔」と一般化して、思いついたスパルタネタをぶっこみつつ序盤に出すキャラは三人にできた。
 目下の問題、ヒロインのミオが身に覚えがないのに身長が三センチ減っているという困った状況に対しての解答はぱっと思いつくものが三つ。
1:自分で悪魔と契約したけど記憶を消されている
2:身長が三センチ減るよう誰かが悪魔に頼んだ
3:誰かが魔法の代償だけをミオに押し付けた
 ――まず2は却下。暗すぎる。
 ――3はやるのにかなりのスキルが必要で、できるのが主人公のアクマのみ。もちろん主人公がやるとせこくなるのでできない。同等のスキルを持つせこい悪役を出せないこともないが、字数が少ないから発見→対決→勝利の流れを丁寧に書けない。うん、無理っぽい。
 というわけで1に決定。ヒロインのミオは自分で悪魔と契約したけど誰かに記憶を消されている。さて、契約して何を得たのだろう。記憶を消したのは誰にしよう。と悩んでいったんペンディング。

工程4:物語をこねながら発展させる

 魔法陣を字数を取って解説したのだから使わないと話にならない。というわけでモブを六人増加。ヒロインの周りの人間関係で固めて、なんとなく学校での立ち位置を把握できるようにしておく。まじめな(元)風紀委員でアクマとはなんとなく敵対関係、という感じ。二項対立はないよりあった方がキャラ立ちがよいから。
 さて、「15の悪魔」を呼び出すに当たって、この名称を種族ととらえると「あの15の悪魔」とか「この15の悪魔」とかがでてきてややこしい。シェンロンみたいに条件を満たすと出てくる神様っぽいあれにしよう。(本編では”権能”と表記)。

 具体的な呼び出し方は文字数の問題もあって簡略化。スパルタだから筋トレ、呪文は「うまく聞き取れない悪魔言語」。で、呼び出しました。こっからどうしよう。物語の表向きの目的は「誰がミオに契約の代償を押し付けたか悪魔に聞いてみよう」、つまり3の仮説を追っている。でも実際には1の仮説が正解なのだから、悪魔には3を否定しつつ1に誘導してもらわないといけない。
 ――うーん、さっきペンディングした「ミオは契約して何を得たのだろう。記憶を消したのは誰にしよう」という謎に答えを出さないことには先に進めないっぽい。
@ミオは今、契約したことによりXを得て、記憶を失っている。
A「Y」がミオの記憶を消した。
 ――この二つの文章をさっくり解決できるようなXとYは何処かに転がっていないものか。

 ……あれ、ひょっとしてこの二文って、こう当てはめれば簡略化できるんじゃないか?

@ミオは今、契約したことにより「記憶を失っている」(状態)を得て、記憶を失っている
 ↓
 ミオは今、契約したことにより記憶を失っている。
A「ミオ」がミオの記憶を消した。
 ↓
 ミオは自分の記憶を消した。

 ――うむ、要素を足さなくてもあっさり解決できた。これでいいや。
 では何故ミオは悪魔に頼んでまで記憶を消したのだろうか。三センチの身長と引き換えにしても忘れたい記憶があったということになる。……まあ、色恋沙汰やろなぁ。コンテストの雰囲気と絡めるならそれ一択。
 色恋沙汰の相手は「忘れてしまえば失恋が解決してしまう」ような状況にいると考えると自然。例えば卒業した先輩とか。モブの中、というか学校含めたヒロインの生活空間にはもういない相手。ちょうど風紀委員長のポジションが空いてるからそれでいいや。ついでに序盤で適当に名前出しておいた生徒会長が恋敵で、アクマくんがその仲を取りもっていたこともあり間接的に失恋の原因にもなったと、よしよし、きれいに人間関係の輪ができた。――短編の後半で投げた新しい輪っかが読者の頭に入るかは分からんけど、まあそこは読者を信じよう。ついてこいよ!

工程5:帳尻を合わせて〆る

 例の仮説3を否定するロジックに手間取り「五倍の違約」とやらをひねり出さないといけなくなった。対価を払った契約者だけが五倍で取り消せるというもの。後付け感は否めない、というか実際後付け。序盤のセリフを少しいじって前ふりだけはしておこう。
 紛れもなくこの小説の弱点になるが、「15センチ」というお題と絡めて考えると弱点だけとも言い切れない。序盤に「三センチ」と控えめに縮んでる設定でいったせいで「15センチ」というお題から若干ずれてしまっている感じもあるからだ。(15の悪魔の存在で15は強調しているが「15センチ」という単位付きでの位置が弱い)。
 というわけでオチには「15センチ」を絡めないといけないわけだが、その際に3センチ×5倍の「15センチ」がきっと役に立つだろう、という算段。つーか役立てないとしまらない。
 よしおっけー、エンディングが見えた。
 モブたちの証言を繋いでアクマに巻きで推理させつつ、ミオの失恋にたどり着かせる。
 
 最後の仕上げ、失恋の発覚から、アクマとミオの恋愛感情にどうやって繋げるか。
 まずはアクマがミオを好きになる動機。元々かなり見た目が気に入ってるっぽい序盤のリアクション。そこからさらにぎらつかせるには。
 ミオは本当にたった一人で一カ月足らずのうちに「15の悪魔」と契約し、記憶を消した、というシンプルな真相にしたらどうだろう。ミオが実はそこまで優れた悪魔契約者だったとしたら、アクマはたぎるに違いない。
 で、ミオの視点では自分がそこまで一人でやれるはずもないから、アクマがこっそり手を引いているのだと考える。ミオはアクマの動機を推理しようとしてアクマのぎらぎらした態度にぶつかる。ははーんこいつ私が好きだから、うまいこと失恋の辛さを利用して思い出を消して、「私の初恋」を手に入れようとしてるのね、そうはいくもんですかと、うぬぼれとうれしさとくやしさとが混ざったツンデレな感じで行くのはどうだろう。もちろん読者視点でもこちらの方がリアリティがあるし、ミオ視点でずっと書いてきているからこれを地の文で書きつつ、真相のアクマ視点はセリフで匂わせておくだけにする。

 で、誤解して怒ったミオに「五倍返しだ!」のセリフを言わせたら完成!
 アクマが空気を読んでの「俺から一五センチも奪う気か!」の問い返しをしたことにより「15センチ」のお題を完全クリア。三センチの風紀委員長への恋に対して五倍の熱量をアクマにぶつけているわけだ。

 ひゃっふー完璧! やっぱ俺って天才だな。


      〇

 えー、今日はですね、投稿日翌日の夜ですけども。読者は、誰一人、来ませんでした。誰一人読むことなかったです。おかしいですねー、何がいかんかったんでしょうかね。あらすじにスパルタ云々混ぜてハイテンションな楽しい話だよってアピールできたはずなんですが。いちおうコンテスト参加しましたし5人か10人くらいはくるかなーて思ったんですが、一体なにが足りんかったんでしょうかねー。

 こういう悲しい結果で、終わりですね……。


 
 
 
posted by 雉やす at 02:46| Comment(0) | 自作小説裏話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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