和多月かい
Cノベルス(2014)
”地球が異世界と融合しようとも、日本の近海に魔法帝国が出現しようとも―社会人一年生の藤崎通には好奇心以外の関係はないハズだった。しかしその帝国支部への配属となれば話は違う。通はいきなり未知の大陸でのプロジェクト最前線に立つことになった。一方、その魔法帝国はある理由から深刻な『魔力』不足に陥っており…。これは藤崎通の奮戦の物語。第10回C・NOVELS大賞特別賞および読者賞受賞(第10回記念として特設)受賞作。”
「日本の隣にできた魔法帝国の魔力が不足してしまったらしい。ビジネスチャンスだから原子力発電所作りませんかって売り込んできて」
「いやでも原発はちょっとアレなんで太陽光の方が僕的にはいいかなって思うんすよね」
「はぁ? 知らねーよ原発の方が儲かるから原発売り込んできて」
「ほげぇ」
――ざっくりかみ砕くとこういう話。
魔法帝国というよりさっぱり機械化されていないクソ田舎って感じなので、実際ビジネスチャンスは多そう。ダムを作ったり魔法犯罪を防ぐ「結界」を商品にしたりと、他にもいろいろやっている。
でも、「お仕事がんばってて偉いですね」以上の感想が浮かばない。
せっかくダムの建設で機嫌を損ねる大水蜘蛛を出したのに、暴れさせないであっさり説得で引き下がらせたり、
せっかく魔法を使った大統領暗殺計画を出したのに、呪文を唱えて「世界中に」大雑把な結界張っただけであっさり防げたりと、ミッションを遂行する過程に何の面白みもないからだろう。
原発の売り込みにしても、主人公のトールくんが感情的な反原発論者なのでいまいち話が盛り上がらない。
放射線すら結界で防げる魔法の国に原発作らない理由は実際ないよなと、本社が繰り出すプレゼンに読者まで納得してしまうので、トールくんがごねて太陽光発電を推す展開に乗り切れない。
第三の選択肢(風の魔法でタービン回す)も正直いらないかなぁと思う。「そっかこの魔法帝国は風の魔法でタービン回すぐらいの知恵もなかったのか」となんだか脱力してしまう。
トールくんに代わって皇太子陛下にご注進申し上げるなら、原発の安全性というのは設備以上に「運用」の問題なので、機械の素養ゼロのあなた方にできるとは思えないし、日本に丸投げするにしても日本人は実際に原発事故を起こしてしまったし、あんまり信用しすぎるのもどうかと思いますよというぐらいだろうか。
なんかこう全体的に「ハードル」が足りなくて盛り上がりどころに欠けるんだよなぁ。くっそ汚い中国企業がくちばし突っ込んでくるようなわくわくが欲しい。
切り口はおもしろいんだけどなぁ。
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