アーサー・C・クラーク
グレゴリィ・ベンフォード
ハヤカワSF文庫(2005)
”遙かな未来、地球は砂漠に覆われ、かつては繁栄を誇った幾多の都市も廃墟と化し、ただひとつダイアスパーだけが最後の都市としてほそぼそと生き延びていた。このダイアスパーで7000年ぶりに生まれた子供アルヴィンは、変化のない生活に飽きたらず、外の世界を探険すべく旅立つが…巨匠クラークの名作『銀河帝国の崩壊』を第1部とし、ハードSFの第一人者ベンフォードが第2部を新たに書き加えた、壮大なる未来叙事詩。”
第一部はおもしろい。不老長寿の人間たちが住む「ダイアスパー」から飛び出したアルヴィンは、テレパスが使える人間たちが住む「リス」を発見する。二つの文明の技術差や価値観の違いを通して立体的にはるか彼方の未来を描いているのがよい。
とんちじみたロボットの使い方にも意外性があってよい。時代が時代だけあってロボットは「なんでも言うことを聞いてくれる召使い」という感じで、セキュリティシステムや脳みそはついてなさそうだが、それも味になっている。今の時代だとこういう書き方してもしらけちゃうけどね。
第二部は難解。第一部でさわり程度に登場する「狂った頭脳」と、旧人類のクレイ、パターンの研究者(シーカーアフターパターンズ)、第一部の主人公アルヴィンらが対峙する話。
バイオテクノロジーや木星改造など様々なビジョンに触れつつ、生態系を守るために人間のエゴ(狂った頭脳)は死ねという方向にまとめられていく。まあ、昔のSFにありがちな、エゴの代わりにエコを押し付けてくる感じのアレ。
昔はこの手のややこしい書き方をして意味が取りづらいSFをそれなりにありがたがって読んだものだが、今となっては正直、下手な文章を丁寧に読んだってしょうがないなぁと思ってしまう。
おもしろいSFってどんなにハードでも文章は明晰だしね。
もっともこの本の場合は、アーサー・C・クラークがぼかして書いているところを具体的に突っ込んで発展させようというのが第二部のコンセプトなのだろうから、多少くみ取れるところはあるかなとも思う。
でも例えば、「月の火山から絶え間なく放出されるガスの膜が月の上空を覆っているおかげで月には空気がある」みたいな無理っぽいディテールを塗りたくる必要はないわなぁ……。
なんかこう、二人の小説家の腕の差が残酷なぐらいに表れているなと思った。
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