2017年10月11日

殺人方程式―切断された死体の問題―(綾辻行人)

殺人方程式―切断された死体の問題―
綾辻行人
講談社文庫
初出:カッパノベルス(1989年5月)



”新興宗教団体の教主が殺された。儀式のために篭もっていた神殿から姿を消し、頭部と左腕を切断された死体となって発見されたのだ。厳重な監視の目をかいくぐり、いかにして不可能犯罪は行われたのか。二ヵ月前、前教主が遂げた奇怪な死との関連は?真っ向勝負で読者に挑戦する、本格ミステリの会心作。”

 「首切りの理由」という点には力が入っている。
 「トリック」は唐突でもっと導線がほしい。
 「犯人」については「死体移動」の必然性と絡めてるところはよいなと思う。「動機」はアレだけど。
 「探偵役」については刑事と双子でなんやかんやの設定がいるようないらんような感じだったけど、捜査はスムーズに進んでたからまあよい。
 「おもしろみ」に関して。損なってるのは新興宗教についての設定や描写が適当であんまり頭に入って来ない点。「ミスリード」の成分が多すぎてきれいな絵になってない点(「ミスリード潰し」には力入ってない)。あとは正直、このトリックと犯人の組み合わせだと「すっきり爽快」というわけにはいかない。アミノサプリと昆布茶を混ぜたような感じ。まあ、まずいよね。


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posted by 雉やす at 23:44| Comment(0) | 書評(ミステリー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月29日

ジージーとの日々/震度4の秘密(有栖川有栖)

ジージーとの日々
有栖川有栖
角川文庫『壁抜け男の謎』収録
初出「ダ・ヴィンチ」2006年4月号



子育てロボット「ジージー」とある家族との生活を描いた短編。叙述っぽい要素がある。
こういう落とし方なら「世代間のテクノロジー格差」の描写が物足りないなと思った。

叙述トリック昔はあんまり好きじゃなかったんだけど、某自作小説のおかげで「まっすぐ書く不毛さ」にどっぷり浸ってるせいか、効果があるんなら望ましいなと思うくらいになってる。ネタを明かされたときに作中風景が一変するような秀逸なのもあるしね。道尾の向日葵とか。


震度4の秘密
角川文庫『壁抜け男の謎』収録
初出「ダ・ヴィンチ」2004年4月号(震度4の秘密―男)
  「日本テレコム SHORT THEATER」(震度4の秘密―女)

 結婚を間近に控え互いに秘密を抱える男女が地震をネタに探り合いをする話。
 同じ会話シーンを二つの視点から、という切り口で書かれている。

大学の授業で「相手がどう考えるか、何を思っているかが分からない。その不可知さに価値があるのに、視点移動で何でもかんでもペラペラしゃべる露出癖の馬鹿っぽい小説だよ。言い訳してないで勉強しろ」と某教授が「ぼくは勉強ができない」

を散々けなしていたのをなんとなく思い出した。でも「まっすぐ書く不毛さ」に比べたら良し悪しはどっこいどっこいじゃないだろうか。少なくとも視点を割った方がこんなふうに短くて済むし。――あぁ視点割りてぇ。

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ラベル:有栖川有栖
posted by 雉やす at 13:38| Comment(1) | 書評(ミステリー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月21日

Cの妄想/迷宮書房/怪物的趣味(有栖川有栖)

Cの妄想
有栖川有栖
角川文庫『壁抜け男の謎』収録
初出「讀賣新聞」2003年10月28日



カウンセラーの元に「自分は小説の登場人物なのではないか」という妄想を持った患者が訪れる話。
類型的な話を星新一っぽく新聞一ページにまとめている。
こういうネタを読むと「王様は裸だ」と指摘されてるような気分になる。
まあそうでしょうけど……。so what?

迷宮書房
有栖川有栖
角川文庫『壁抜け男の謎』収録
初出「しゅっぱんフォーラム」2006年7月、8月号

注文の多い料理店をメタった話。”他の作家の作品がどれもこれも見事にいい話だったので、「この流れを俺が断ち切ろうと思わずにいられなかった。”というあとがきの一文に尽きる。有栖川有栖はいい作家だなと思う。



怪物的趣味
有栖川有栖
角川文庫『壁抜け男の謎』収録
初出「アート偏愛 異形コレクション」2005年12月

AがBだろうと思っていたら実はAだった、というタイプの話。
某大物youtuberの「おいしいけど、おいしい」みたいなものである。Bを期待するであろう受け手に対して躊躇なくAを繰り出すことによって「Bじゃないんかい」「そのまんまやんけ」と笑いどころが生まれるわけである。そういう森永パルムっぽいおもしろさはある。

ラベル:有栖川有栖
posted by 雉やす at 20:33| Comment(0) | 書評(ミステリー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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