2017年06月27日

猛虎館の惨劇/有栖川有栖

猛虎館の惨劇
有栖川有栖
角川文庫『壁抜け男の謎』収録
初出「新本格猛虎会の冒険」2003年3月



 外壁はトラジマ、屋上にはコンクリート製のトラ。空から見ると「HT」の文字になる猛虎館で、家主であり、大の阪神ファンである建築家の綿鍋大河が首無し死体で発見された。
 聞き込みをするうちに、東隣の怪しいジャイアンツファン川上の名前が上がる。さらに、「誰かが門の中でトラッキーのお面を被って後ろ向きに歩いていた」という奇妙な証言も現れる。
 川上のアリバイは固く捜査が難航する中、綿鍋が「来年のシーズン開幕前には、もっとすごいことになっているはずだよ」と言い残していたと聞いた刑事は、ある推理を思いつく。
 この館からは、きっと〇〇がなくなっているに違いない――。

 まあ笑い話なんだけど、オチの下りがめっちゃ笑えるのでぜひ読むべき。
 捜査している阪神ファンの刑事に球団の蘊蓄を語らせ、聞き込み中のライターに虎についての蘊蓄を語らせる中で、あんまり関係なさそうだった部分をちょろっと真相に援用してるのがいい感じだなと思った。

 初出の「新本格猛虎会の冒険」なる奇書は、2003年の開幕に合わせて創元社から発売されたらしい。



 北村薫と小森健太郎も参加してるそうな。
 一冊買って全作レビューでもしてみようかな。
ラベル:有栖川有栖
posted by 雉やす at 13:26| Comment(0) | 書評(ミステリー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月24日

天国と地獄/ざっくらばん/有栖川有栖

天国と地獄/ざっくらばん
有栖川有栖
角川文庫『壁抜け男の謎』収録
天国と地獄/初出「小説現代」2007年2月
ざっくらばん/初出「相鉄瓦版」2006年12月



天国と地獄
 鬱々と飲んでいた俺は、バーのマスターから天国と地獄の食堂の話を聞かされる。どちらの食堂もごちそうで満ちているが、どちらの食堂にも90センチの長い箸しか用意されていない。地獄の亡者たちは箸をうまく使えずに、ごちそうを自分の口に運ぶことができない。しかし天国にいった人たちは、長い箸でお互いに食べさせ合うことでごちそうをたらふく食べられる。
 その話を聞いた俺はあるアイデアを思いつき、実行に移す――。

 原稿用紙五枚のショートショート。類型的な話ではあるが、「犯人」視点で「気付かれる」瞬間に区切ってショートショートにまとめるのは手つきがよいなと思う。

ざっくらばん
 開発中の新製品の情報が他社に漏れたかもしれないという状況の中、山形の元に脅迫文が送られてくる。スパイがいるのではないかと探っているような文面の中で、とりわけ目につくのは「ざっくらばん」という誤字だった――。

 誤字、誤用の類は「犯人だけの特徴」として推理の材料に使うことができる。トリックだけ思いついたけど犯人を「ただ一人」に限定できないような時、追加の要素として加えるとうまいこと犯人当てが作れるかもしれない。
 ――という一般論はさておき。誤字を元にして脅迫文の犯人を特定してからの流れがステキだなと思った。”「誤字を使うのは誰か」に気付いている”、というのも「犯人だけの特徴」になりえるのだね。
ラベル:有栖川有栖
posted by 雉やす at 11:11| Comment(0) | 書評(ミステリー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月23日

ミタテサツジン/有栖川有栖

ミタテサツジン
有栖川有栖
角川文庫『壁抜け男の謎』収録
初出「野生時代」2007年11月



 元俳優の一条真之介と元マネージャーの大竹は、休暇に立ち寄った島で殺人事件にまみえる。磯富花香、月菜、雪海の三姉妹が振袖姿で殺されていた。それぞれの死体はまるで「獄門島」のように宝井其角の句に見立てられていた。
 被害者たちは何故振袖を着ていたのだろうか。そして、わざわざ「獄門島」になぞらえたのは何故だろうか――?

 「見立て殺人」という日本語の解釈平面には確かにそういう意味も含まれるよね、うんうん。
 「下りあさかぜ」と似たような言葉遊びの洒落話。なんだけど、いざ自分で同じ条件で書いてみろと言われてもたぶん「真さん」のような強烈なキャラクターはたぶん出てこない。何かもう一つ別の元ネタがあるんだろうか。どういう経路で思いついたのかちょっと気になる。

 ひとつ前に載っている短編の「彼方にて」は、元ネタの中井英夫の「黒鳥譚」読んでないから割愛。内容としては、笠井潔の「大量死理論」に「虚無への供物」の当事者性の問題を混ぜ込んだような「新形式の殺人」について、虚無的な雰囲気で書かれている。――ような気がする。
 
ラベル:有栖川有栖
posted by 雉やす at 08:03| Comment(0) | 書評(ミステリー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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