古野まほろ
講談社(2021年5月)
”真夜中の吉祥寺で発生した謎の火事。
被害家屋から、片手錠で固く拘束された女子高校生の遺体が発見される。
他にも男3人が死線をさまよう中、唯一無傷で確保されたのは、
その家に独り暮らししていたはずの被疑少年、T17歳。
Tが完全黙秘を貫く間、科学捜査を進めた警察は、
この家における女子高校生集団監禁の実態と、
彼女に2週間も加えられた言語道断の仕打ちを知り激昂する。
するとTは、その激昂を嘲笑うかのように完全黙秘をやめ、
自らの鬼畜の所業について雄弁な自白を開始するのだった……
取調べ官VS.被疑少年。命と誇りを懸けた一騎打ちの結末は。
元警察官が描く、慟哭必至の警察ミステリ。”
書き出しはむちゃくちゃウェットな監禁集団レイプ事件。が火事によって明るみに出るという流れ。
警察によって、犯人たちへの嫌悪感を搔き立てられるえげつない事件の要諦がまとめられていくんだけど、なんと報告を受けるのが箱崎ひかり。――え。まじかよ箱崎ひかりのシリーズものだったのか。という驚きがまずある。
というのも彼女は「常にゴスな服を身にまとった女管理官」というキャラものきわもの警察官なので。ウェットな監禁集団レイプ事件を担当するには異物感が強すぎる。酢豚にパイナップル、あさり噛んだら「じゃり」っと砂混じり。
これ、あまりに「装丁で損をしている」のではないか。
事前に箱崎ひかりを知らない人が読んだら、とてもじゃないが正当な評価は受けられないんじゃないのか。
だって序盤の段階では「事件の陰惨な内容と捜査する刑事のリアリティレベルが合ってない」んだもの。もちろんまほろだから最終的にはその食い違いが見事に噛み合っていくんだけど。初読でそこまで読んでくれる人が何割いるんだ?
講談社だったらライトよりの文庫もあるんだし、中村佑介(夜は短し〜のイラストの人)あたりにお願いして「箱崎ひかり」シリーズみたいな形で売りだせないものか。で、キャラもの系かな? と思った読者に監禁集団レイプ叩き込んだらそれが「意外性」になってページをめくってくれるんじゃないの。
情報の出し方が逆だって。一度集団監禁レイプ要諦描写で読書感を最悪なところまで叩き込んでから、キャラもの刑事たちのぞなぞな会話を楽しむのは、さすがに厳しいものがあるぞ。俺にも無理だったわ。
中盤からハコ管理官の推理(被害者・加害者の基礎捜査パート)によって事件がアクロバットな因果関係で繋がれていき、いわばいい意味でハコ管理官がリアリティレベルを自分の方に引き寄せてくれるので、そこからは違和感なくおもしろく読める。
被害者少女の心理については断定されすぎないようにかなり気を使って「灰色」に描かれている。真なる意味で「許されない恋」ではあるから。
ただ、俺が少年だったら警察は裏切るかな。
この少年には「親の仇を取る」という発想がない→「行動するに際して親への優先度があまり高くない」んだから、
「親の将来」なんて今さらも今さら、中途半端に気にして取引するより、恋に殉じて、
彼女を加害したすべての者に、炎上したまま抱き着きに行ったほうがよかったのではないかと思う。
週刊誌にやつの名前出すだけでできることだし。
不満があるとするなら「警察が痛い目に合ってない」こと。その一点。あとはよし。
ラベル:古野まほろ

