古野まほろ
新潮社(2020年5月)
”公安vs.カルト! 元警察キャリアの知識と体験と想像力が融合した、唯一無二の警察小説! 二十五歳で県警察本部の公安課長。六十七人の直属の部下たちは、一筋縄ではいかない強者ばかり。しかも、その県には、日本を危機的状況に陥らせるかもしれない「カルト」の総本山があった。いざ赴任! というそのときに飛び込んできたのは、あってはならない殺人事件の知らせだった――。元警察キャリアにしか描けない世界が、ここに!”
引用したけど何にも伝わってこないなこのあらすじ。下手くそめ。固有名詞がないあらすじなんて逆に何も伝わらないぞ。
時代は1999年の世紀末。オウム真理教が起こした未曾有の宗教テロの影響が残る中、赴任した愛媛県に「まもなくかなたの(MN)」という旧温泉街を乗っ取った宗教組織があった。「キューピッド」なる殺傷力の高い毒物を有するMNを内偵するべく公安課長に就任した司馬警視。だが就任直前に前任者の公安課長が警察署内にて「キューピッド」らしき毒物で殺害されてしまう。どうやら警察の内部にもMNが浸透しているらしく――。
という感じ。P350くらいまでは微に入り細に入り警察キャリアの人事の話やら初任までの流れやらでけっこう読んでてしんどい。文庫版も出版されてるけどほぼほぼの読者が上巻で切っちゃうんだろうなと心配になるほど。
後半から「カルト教団の構成員を別件(失業保険の不正受給)で引っ張る」という形でようやく話が動き出す。
この小説のおもしろみは「教団と警察内部にお互いにスパイがいる中で、どうやって宗教組織にかち込みをかけて教団や教祖を獲るか」という将棋っぽいストーリーにある。警察において「別件逮捕」とそれを成立させるための組織間の根回しがいかに重要か。あぁ読んでるだけで大変そう。
殺人事件については伏線に忠実かつリアリティのある範囲内で解決される。意外性は上記の将棋の差し回しの中で担保されている感じ。エラリイ風に言うなら主人公もちゃんと「盤上」にいてリスク背負ってるのがよいね。
ただし「キューピッド」はね、某「雫」です。過度な期待はしないように。
それなりに人を選ぶタイプの小説だとは思うが、
@もともと警察ものが好き
A適度に細部を読み飛ばしても気にならない
Bまほろファン
のどれかに該当すれば気に入ると思う。とりわけ警察小説って「キャリアのお偉いさん目線」で書いてあるものはあんまりない(よね?)。
そういう意味ではかなりのレアものだと思うので、勉強のつもりで「新任巡査」からこのシリーズを読んでいって、向後の警察小説ライフに活かせばよいかと。
あと、この小説は「警察が未曾有にやらかした」「統一教会絡みのアレ」の前に出版されていて、少し切ない気持ちにもなる。
だからこそ需要を見込んで文庫化までされているんだろうけれども。
ここまで努力して関係団体を監視しようとも。
曲がりなりにも組織の体をなしていたオウム対策だけでは、逆恨みの個人テロまでは防げないんだなぁ。
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