2023年05月02日

終末少女AXIAgirls/古野まほろ

終末少女AXIAgirls
古野まほろ


”あたしは絶対にバケモノなんかじゃない!!でもあなたは…。世界の終わりは突然始まった。黒の海が大地を沈め、無数の「口」が全てを食い尽くしてゆく。この終末から逃れ、天国のような孤島に着いた少女らは、しかしそこでも海の彼方に「口」どもを見た。絶望までの時間を静かに暮らす中、彼女らは謎めいた漂着者らを助ける。だがそれは結果として、嘘と裏切りに満ちた殺し合いの始まりとなってしまった。魔女は、そして生き延びるべきは誰か?終末をかける少女らの超絶論理。”

もっと平たくあらすじを言えば
「天使(美しい少女。お互いに嘘が付けない/簡単な道具を作り出せる能力を持つ)」と
「悪魔(黒い口だけの化け物。天使を強姦することで悪魔にすることができる/天使に完璧に擬態できる/天使と違い嘘が付ける)」が
天国に一番近い島(クローズドサークル)を舞台に「人狼」チックなサバイバルをするお話。
啓示を経て天国への門に到達するのが天使の勝利。となる。

天使は嘘が付けず、悪魔は付くことができる。
つまりある登場人物が悪魔かどうか見破るには「嘘をついているか」を判別するのが有効となる。こちらが正当な解き方。
道中レズ趣味やら少女趣味やらに走っててすごく不安になるし、(まーた初見様バイバイしてるでこれ)と悲しい気持ちにもなるが、そこはまほろなので最終的には「読者への挑戦状」がついた本格ミステリーに着地する。

が、別解として人狼風、もしくは「狼と羊の渡し船」風に、人数差に着目したパワープレイが成立しているかによってフーダニットを当てることもできる。つまり「1対1だと悪魔のが強い」ので。一人でも「これは悪魔だ」と確信を持てたらそこから行動を追えばなんとなーく解答することもできる。あからさまに怪しいのもいるしね。

かなり叙述系のトリックも絡むので深い感想は書きにくいが、「なんか違和感があるな」と思った部分部分がきちんと回答されるのがさすがだなと思う。読解力が試されますね。読解力ないから毎回見事に騙されるんだけどさ。

書きにくいのだがどうしても伝えたいポイントがある。

「これ入ってますよね?」「いや入ってないっすよ(すっとぼけ)」を深く検討しなければ謎は解けない。
つまりは「どのタイミングでアレが入ったか」をまじめに推理する貴重なアハ体験ができる。
「どっちに入ってるねん」「そっちに入ってたんかい!」という意外性にも事欠かない。

そのような魅力のある本当に希少な作品ということだけはどうしても伝えたい。
フーダニットの人狼ゲームのようでいて実はそうではない。
Whenだ。問題は「いつ入れたのか」だ。推理の導線としてはそれが一番正しい。

古野まほろ……。なんて悲しい作家だろう。こんな凶悪な下ネタがポリコレ全盛の時代に流行るはずもないのに、おもしろいから書いてしまうのだろう。心を病むのも無理はない。



ラベル:古野まほろ
posted by 雉やす at 02:11| Comment(1) | 書評(ミステリー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コトタマ
Posted by 言霊 at 2023年05月08日 19:40
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村