おみくじは末吉で「あんまり焦ってもいいことないから落ち着いて行動しましょう」とのこと。せやな。
ひつまぶしという食べ物がなんなのかよく分からなかったんだけど、どうやら鰻丼からお好みで薬味を乗せていって最終的にはだし茶漬けで〆るという一連の流れを「ひつまぶし」というらしい。なかなか行為遂行的で結構な料理だなと思う。牛丼屋でやるなら丼の途中で紅ショウガ山盛りにしてお茶をぶっかけるような感じだ。要するにただの鰻丼とその味変に過ぎないのだが、味変も含めて名前をつけてしまえば別の料理として成立するというのは、これは結構な発明だなと思う。
食べながら山岡荘八の「織田信長」の桶狭間のくだりを思い出した。出陣前に信長が立ったまま湯漬けをすすって、息子の奇妙丸たちに「湯漬けは立ったまま食った方がたくさん食えるぞ。覚えておけ!」とキレ気味に怒鳴りつけるのである。「おかわり!」「おかわり!」「次を持て!」と少年漫画の主人公の如く鬼気迫った様子で食べに食べる信長の描写から精神の高揚が伝わってきて、良いシーンだったなと思う。
後世ひつまぶしをひねり出した鰻丼屋も、桶狭間の前に信長がいっぱい湯漬けを食べたことを熱田神宮繋がり(桶狭間前に信長は熱田神宮で戦勝祈願をした)で思い出したのかもしれない。
「そうや〆の茶漬けで無理やり流し込むところまで含めてパッケージで売り出せばもっと大盛りの鰻丼食べさせられるやんけ。ついでに茶ぁ注ぐのも客にやらせれば手間はそのまま客単価アップや」という理屈である。
客もなんとなく熱田に来ると信長と桶狭間のくだりをやりたくなるから、目の前に湯漬けがあったら「おかわり!」「おかわり!」とやってしまう。要するにこの奇妙な料理は「信長ごっこ」なのだ。客はなんとなく勇ましい気分になりたくて、熱田神宮にやってくるついでにひつまぶしを食うのである。
出店で他にもいろいろ食べたせいで実際にはおかわりできなかったが、まこと得難き経験であった。
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