例によってアメリカ軍がベトナムの文句を言いながら謎の島を調査しに行ってひどい目に合う冒頭。
コングが大暴れしてヘリを落とすシーンは爽快感あってよかった。もちろんそこがこの映画の最大瞬間風速なので刮目するべき。
脚本の芸が細かいというか、ストーリーがどうしてもテンプレートになる分気を利かせている。
コングがヘリにヘイトを向けたのはなんで?→地質調査のために爆弾落としてたから。
コングが美女カメラマンを助けるのはなんで?→美女カメラマンが中途半端な大きさの水牛を助けようとしていたのを目撃したから。
など、まるで現代文の問題のようにコングの内面がある程度トレースできるようになっている。
でコングの内面なんか知ったこっちゃない黒人隊長が部下の仇を取るべくいきり立つのもよい。
そうだよな、この隊長のポジションは黒人にしないとポリコレ的にしんどいよな。ここが白人だとコングがまるで黒人のようにとらえられかねないものな。
キングコングが白人の美女カメラマンに欲情してる描写が一切ないのもポリコレ配慮以外の何物でもないと思う。そんなのいちいち気にして怪獣映画作って何がおもしろいんだろうとも思う。だからコングの敵もすんげぇくだらないおっきなトカゲで何の盛り上がりもない。最低限ヘリ部隊よりもキャラクター性と戦闘力を持つ敵でなければならなかっただろうに。物語性のある敵は出せないのだ。うっかりコングが重なってしまうとまずいから。
でもコングがラストで、イケメンおじさんと美女カメラマンが二人抱き合ってコングを見上げるシーンで何かを悟って、
暴れることもなくすっと背を見せて去っていく様子には哀愁を感じた。
あの背中には寅さんを感じた。
あまりに三枚目で切なかったので実際にネトフリで寅さんを見始めた。
そしたらエピソード2の終わりがまんまキングコングの流れだった。
どんなに優しくしてくれてもな。
うなぎを釣っても親の葬式取り仕切っても、水没したのを救ってもオオトカゲを倒しても、
女は三枚目にゃなびかねぇんだわ。
寅さんは顔で笑って心で泣くが、コングもまた顔で怒って心で泣いていた。
ラストシーンはコングの怒り顔のドアップなんだけど、もうトカゲの親玉倒したのに何にそんなに怒っているの? という向きもあるだろう。
コングは一人ぼっちの自分に怒っているのだ。
これから先も原住民の小人たちを壁の向こうで飼って心の慰めにしながら孤独に耐えていくんだろう。
この映画単品だとつらいんだけど、ラストで存分に切なくなって「切ないほしい」の口になってから見る「男はつらいよ」が本当によい視聴体験だったので、両方見てない方はこれを機にぜひこの順番で見ていただきたい。
よく言うなら「切ない」コース料理の前菜であり、
ミルクボーイ風に言うなら「まだ寿命に余裕があるから見てられる映画」だった。
かわいそ猿〜。