2016年04月19日

日本人と日本文化/司馬遼太郎・ドナルドキーン

日本人と日本文化
司馬遼太郎・ドナルドキーン
中公文庫(1996)



”「ますらおぶり」と「たおやめぶり」、忠義と裏切り、上方と江戸の違い、日本にきた西洋人―雄大な構想で歴史と人物を描き続ける司馬氏と、日本文学のすぐれた研究者であるキーン氏がともに歴史の香りを味わいながら「双方の体温で感じとった日本文化」を語る、興趣つきない対談。”

 日本が外国から受けた影響と、その影響に染まりきらない日本の独特さ。というような話がテーマの対談。中世から昭和まで含めた幅広い知見には読み応えがある。
 特におもしろかったのが第六章「日本に来た外国人」。シーボルト、ポンぺ、アーネスト・サトー、フェノロサ、チェンバレンなど、幕末から明治にかけて日本で活躍した外国人にふれている。
 ”要するに、どんなに日本のために働いても、どんなに日本に弟子をつくっても、最終的には彼らは日本人にはなれなかったということです。”
 と司馬遼太郎が総括するように、外国から来た学問や文化を受け入れよく学び、日本流にローカライズしてしまって、原理や起源についてはさほど拘らないという、本書でふれられる日本人の特性がよく表れている章だと思う。ほんのりと物悲しくもある。
 アーネスト・サトーって日本人の洗礼名じゃなかったんだ。イギリスの人だったんだね(小並感)。

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posted by 雉やす at 22:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(歴史・軍事) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月12日

新宿歌舞伎町交番/久保博司

新宿歌舞伎町交番
久保博司
講談社文庫(2006)



”ビール1本10万円のボッタクリバーのカモにされる客、援助交際する女子中高生、塒と食事を求めて集まる浮浪者、ゲーム店を根城にする覚せい剤の売人、増殖する中国マフィア。欲望あふれる街・新宿歌舞伎町にうごめく人々とそこで起きるさまざまな事件を、交番勤務の警察官の姿を通じて描く、迫真のレポート。”

 2003年に単行本で出された本の文庫化。
 人が「歌舞伎町」と聞いてイメージするあれこれが網羅的に書かれている、読みやすいノンフィクション・ノベル。
 毎晩入れ代わり立ち代わりでぼったくられては文句を言う観光客や出張サラリーマンの相手をしたり、元気なヤクザが交番の前に車停めて喧嘩売ってきたりと、苦労がしのばれる。ヘルス嬢が人生相談に来たり、寒いから仮病を使って入院しようとする浮浪者に騙されかけたりもする。
 一番おもしろいのは「第六話 歌舞伎町の浄化作戦」。違法な看板を工夫を凝らして撤去していくうちに街の人々の信頼を得ていくという話で、他の話と比べて希望が持てる内容になっている。
 本も終わりの方になると「中国マフィア」の存在が目立ってくる。もっとも、文庫版のあとがきによると2006年の時点では中国系は衰退し、山口組系に勢いがあるそうだ。
 最近出た本と比べて読むと、勢力の入れ替わりの流れが掴めておもしろいかも。

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posted by 雉やす at 22:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月09日

監殺‐警務部警務課SG班/古野まほろ

監殺‐警務部警務課SG班
古野まほろ
角川書店(2015)



”警務課内に組織された、警察の罪を取り締まる監察裏部隊「警務部警務課巡回教養班=SG班」。警察内の異端児たちが、声なき者の恨みを力で晴らす。元警察キャリアの膨大な知見が凝縮された、本格監察小説!”

 まさか現代警察もので「必殺仕事人」やるとは。かなり尖った一冊。
 キャリアの神浜警部が受けたパワハラと、その原因となるメイド喫茶利権の謎を、個性豊かなはぐれ警察官たちが追う。
 メイド喫茶という目新しいガジェットを使ってるのが好印象。普通のキャバクラだったらおもしろさが半減してしまったことだろう。「ポリスの王子様」こと後藤田巡査部長が潜入調査でメイドを落とすくだりがなかなか笑える。
 まさしく「元警察キャリアの膨大な知見を凝縮」したような、ネチネチと微に入り細に入るパワハラ描写にも力が入っている。著者もきっとつらいやめ方をしたんだろうなぁと邪推したくなるほどに。
 パワハラの部分は「殺すために悪役を悪役として立てるパート」であることもあり、「必殺仕事人」メソッドにおいては必要不可欠。読んでいて愉快なパートではないが、真に迫ったものは感じられる。
 
 ただ、読み終わった後の爽快感というか、悪人が切られて万々歳な感じは出せていない。「必殺仕事人」やるだけならスパイなりヤクザなり、アウトロー主体の方が楽なんだろうけど、あえて「監察」、公務員にこだわるところがまほろ流ということか。リアリティはあれど、その分エンタメに成りきれもせずという印象を受けた。

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ラベル:古野まほろ
posted by 雉やす at 23:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(ミステリー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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