2015年12月27日

妖魅変成夜話1/岡野玲子

妖魅変成夜話1
岡野玲子
平凡社バーガーSCデラックス(1999)



 官人になるべく科試を受けるために長安に向かう李成譚は、道中で幽霊の娘や狐の少年に懐かれたり、仙女の婚約者に振られたりと、嫌っていた「怪力乱神」の存在を目の当たりにする。
 無事合格して進士になるやいなや、玄武帝の直属である龍玉将軍の配下につけられる。龍将軍に命じられた任務とは「神仙の捕獲」。諸国に起こった超常現象の原因を解明し、「奥秘事録」なる報告書にまとめて皇帝に献上することだった。

 作者の代表作である「陰陽師」と似たような感覚で読めるが、もっと明るいざっくりしたコメディだ。李成譚を博文、龍将軍を晴明にそれぞれ似せていて、セルフパロディの感もある。成譚は生まれたときに慶兆の徴である「瑞雲」が現れたほどの強運を持っていて、怪力乱神に精力を吸われまくってもしばらくするともとに戻っている丈夫な男。龍将軍は女と見まごうような美貌を持っていて、双子の孺子(じゅし)や雲竜といった式神(?)や術を使う。成譚を当て馬に怪異の原因を探りつつ、おいしいところは龍将軍が持っていくのが話のお決まりである。
 怪異の描き方がよい。大鼈(すっぽん)、金蚕蟲、白毫といった妖魅の正体をぼかしつつ、美女や脇役を使ってうまく話を転がしている。筆を用いる幻想的な画風が題材とよく合っていて、特に白毫の回の凛々しい立ち姿や、竹林で画面を引き締めている感じが好き。


 
posted by 雉やす at 22:47| Comment(0) | マンガレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月23日

乙嫁語り8/森薫

乙嫁語り8
森薫
ビームコミックス(2015)



”アミルの友人パリヤにとって、目下のところ気になるのは結婚相手。率直すぎる性格が災いしてか、なかなか縁談がまとまらない日々。そんなパリヤにも最近、気になる相手ができたようで……。第5の乙嫁(おとよめ)は人気の高いパリヤさんの物語! 果たしてパリヤは結婚できるのか!? 暗黒期から抜け出せるのか!? 悠久の大地・中央アジアを舞台に描くブライド・ストーリー『乙嫁語り』、抱腹絶倒の第8巻!”

 「パリヤがいじらしくて可愛い!」という巻。アマゾンのあらすじのテンションがやたら高くて引いてしまうぐらいな巻なのだけど、彼女の奮闘を通じてモンゴルの嫁入りがいかに大変かが身に染みる。刺繍ほんと大変そう……。
 合間に挟まれるおねショタも相変わらずいいもんですね。


posted by 雉やす at 04:42| Comment(0) | マンガレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ふしぎの国のバード1/佐々大河

ふしぎの国のバード
佐々大河
ビームコミックス(2015)



”ディスカバー・ジャパンーーこれは、古き良き日本文化を取り戻すための物語。
時は明治初頭。東京から蝦夷まで、地図なき道を旅したイギリス人がいた。
その名はイザベラ・バード、冒険家。彼女の目的はただひとつ、滅びゆく日本古来の生活を記録に残すこと。
通訳の伊藤鶴吉をひとり連れ、日本人すらも踏み入ったことのない奥地への旅が、今はじまる!
漫画誌ハルタの実力派新人・佐々大河。初のコミックスは、日本の魅力を熱筆した旅物語!! ”

 イザベラ・バードはイギリスの有名な探検家で、旅をしながら妹に向けてつづった手紙を後に手記としてまとめたものが残っているのだそうな。こないだ見たブラタモリによると最近流行っているらしい。この漫画が流行の一端を担っているのだろう。
 絵やキャラクターの印象は「乙嫁語り」と似てる感じ。元アシさんなんだろうか。画力のすばらしさは人力車夫の入れ墨や日光東照宮の絵などで伝わってくる。
 当時の日本人の人懐っこさ、小汚さ、生理が始まったら大人扱いというロリィな女性観など、明治維新で失われていく「江戸」の名残を記録しようというのが大テーマで、それがはっきり提出されているし、当時の一般的な英国人の差別意識も描いている。抑えるべきところを抑えた、バランスの良いストーリー展開だ。イザベラの感覚はだいたい現代日本人の感覚と同じなので、すんなりと旅をしてる気分に入れる。

 便利な狂言回しの鶴吉が実際どんなもんなのかが気になる。スペックが高くて、ミステリアスな雰囲気で、なんとなく外人を嫌ってる感じはあるが、原作準拠と脚色の配分はどの程度なのだろう。原作をどんなふうに溶かしているのか知りたいという意味で、原作を読んでみたくなった。いい漫画だと思う。


 
posted by 雉やす at 04:23| Comment(0) | マンガレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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