2015年09月20日

仕掛け花火/江坂遊

仕掛け花火
江坂遊
講談社ノベルス綾辻・有栖川復刻セレクション(2007)



"ミステリー、SFから時代物まで、ユーモアとノスタルジアあふれる絶品ショートショート39連発!!40年前の花火の弾けた思い出が目の前に蘇る「花火」。村長が旅人に猫の頭をかぶる奇習について語る「猫かつぎ」など。星新一氏が自ら「後継者」と認めた奇才のショートショート作品集がついに復刊。"

 ショートショートを評価するときの軸って、やっぱり「どんだけうまく落ちてるか」というところになると思う。この作品集もホラー風味のよく落ちてる話は分かりやすくおもしろいし、逆に奇抜な設定に落ちがついてきてない話は読んだあとすっきりしない。
 文章が上品なのもあって人情話や伝奇風の作品に幻想的な風味がある。『占う天秤』という一篇に出てくるふくろうおとこの外見描写なんかなかなかいい。

 "話しかけてきたおとこは、鳥のふくろうそっくりの顔かたちをしていた。顔の半分が目玉と言っても誇張ではない。落ちくぼんだ目の輝きはテーブルの上の二本のろうそくの炎と同じように、右に左に妖しく揺れる。目に比して口は小さく、顔はとても不安定に見えた。いつ顔が半回転しても不思議ではない。身にまとっている黒いマントにはびっしりと羽根が縫い込まれてあり、全身から夜行性の鳥独特の怪し気な雰囲気が漂っていた。"

 これに限らず地の文がよく、地の文がほとんどの回想形式で書いている『秋』という一篇なんかも起承転結整っている。逆に、会話文だけで済ませている幾つかのショートショートはあまりおもしろくない。
 星新一が短い解説を書いていて、「私はラストの効果よりも冒頭の異様さを重視しているが江坂さんはどうなるか見当もつかない形ではじめる」「私はいちいち伏線をつけるが江坂さんは省略している」というような、自身の作法と照らしあわせて比較検討している。〆は以下の様な文章だ。

"SFでもミステリーでもなく、奇妙な味でもファンタジーでもない。なにか独自な世界を創ろうという意欲が、はっきり伝わってくる。私も民話的なものまで手がけたが、古くからの流れを脱皮しきれなかった。その先のユニークな世界を、この作者がどう拓くのか、楽しみだ。"

 これを読んでからふくろうおとこのことを思い返すと、なるほどなと思えてくる。俺なら神話に寄せて「いぬ」にしてしまうかもしれない。どうして占い師にふくろうを選んで、どうして占う方法に天秤を選んだのか。出来上がりからたやすく推測できるような安直な組み合わせではない。それでいて、「異様さ」はたしかに発揮されている。
 星新一の言うように「ラストの効果より異様な冒頭」という価値観に乗るなら、この作品集はなるほどハイレベルだし、必ずしも異様なものを解体して落とし話にしないのも、「その先のユニーク」の一つの形ではあるのだろう。

posted by 雉やす at 00:17| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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